櫻井法務事務所 櫻井 博行
1.はじめに
著作権は知的財産権に包含される権利の一で、文化の発展への寄与を目的とする著作権法に依拠して当該権利の発生・変更・消滅がなされる。
産業財産権も知的財産権に包含される権利である点においては共通するが、産業財産権とされる特許権、実用新案権、意匠権、商標権等は、産業
経済の発展を目的する当該法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法等)に依拠して当該権利の発生・変更・消滅がなされる。
著作権が依拠する法律と産業財産権が依拠する法律とは、その法目的が全く異なり、両権利の比較・考察に際しては法目的の違いへの留意が重要となることは言うまでもない。同時に、両者は現行の知的財産権の二大基幹(知的財産権の体系を参照)と位置付けられ、講学上はもとより実務上も重要な役割・機能を担っていることへも留意すべきである。
記述上の便宜のために産業財産権を特許権に集約させ、知的財産権法の概要を著作権法と特許法それぞれの特質の対比によって提示してみよう。
著作権法と特許法とは、模倣を禁止し創作活動の成果を保護せんとする点において共通し、共に創作保護の知的財産法とされる。
著作権と特許権とは、模倣を禁止し創作活動の成果を保護のために創設される権利であるが、異なる目的の法律に依拠する権利であるので、両者
の相異点は多大であり、これを包括的にコメントすることは困難である。
ただ、紙幅の制約等を考慮しつつ、際立つ両権利の違いを挙げるなら、①権利の発生と②発生する権利の内容、となろう。
①権利の発生につき、著作権は創作という事実行為あったら発生する(著作権17 条2 項)との法制(無方式主義)採るのに対し、特許権は創作と
いう事実行為に基づき特許出願され、最終的に特許原簿に設定登録されたら特許権が発生する(特許法66 条、27 条)との法制(登録主義)を採る。
また、②発生する権利の内容につき、著作権は財産権としての著作権(著作財産権と言うこともある)と人格的側面の保護のための著作者人格権
とが併せて発生するとの法制を採るのに対し、特許権は財産権のみの権利として発生するとの法制を採る。かかる権利の内容につき、その効力は著作権は相対的独占権であるのに対し、特許権は絶対的独占権との法制を採る。
以上より、著作権法の世界と特許法の世界とでは発生する権利の内容に明らかな違いがあることがわかる。すなわち著作権法に依拠して発生する
著作権は著作財産権と著作者人格権の二種類の権利であるのに対し、特許法に依拠して発生する権利は特許権(財産権)だけである。
極めて大まかな提示ではあるが、著作権と特許権とは共に知的財産権に包含される権利ではあるが、既述のように性質・内容を異にする権利であ
ることを前提に、以下本稿の設題である著作権の内容に記述を進める。