東海大学 工学部 室谷 裕志
1. はじめに
光学薄膜は光学部品の表面には必ずと言ってい いほど処理されている。光学薄膜の利用分野は図1 に示す様に紫外線領域から赤外線領域までの広い 波長範囲で様々な光学部品に使用されている。ま た、金額で見ると数十億円する装置の一部から数 円の部品にまで使用されている。さらに光学的な 応用ばかりでなく、光学薄膜の独特な発色を装飾 として利用する、加飾の分野にまでその利用は広 がっている。また、最近ではスマートフォンやタッ チパネルなどに光学的な特性だけでなく、撥水や 撥油の特性を付加して機械的特性(摩耗・摩擦の 低減)や防汚の特性を持たせた光学薄膜も存在す る。この様に「光学薄膜」と言っても求められる 性能や特性は多岐にわたる。このため、成膜方法に関しても通常(真空)蒸着、イオンビームアシ スト蒸着(Ion-beam Assisted Deposition:IAD)、ス パッタリング、IBS 成膜(Ion Beam Sputtering)、 イオンプレーティング、化学気相成膜(Chemical Vapor Deposition:CVD)、ALD(Atomic Layer Deposition)、ゾル- ゲル法(Sol-Gel)など様々な 成膜方法が光学薄膜に求められる特性に合わせて 用いられる。また、光学薄膜を製造する企業にお いても得意分野を持っており、それに合わせた装 置を保有している。この点が、レンズの発注と同 じように、発注先を考慮することにつながる。
光学薄膜について記述しようとしたとき、ここ まで述べてきた様に装置、利用分野など色々な面 で非常に多岐にわたるため、その全てを述べるこ と難しい。本稿では日本の光学薄膜の簡単な歴史、 最近の光学薄膜の話題について紹介する。
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