東京都市大学 江場 宏美
1.はじめに
アルファベット26 文字の中で“X”で始まる英単語は最も少なく、思い浮かぶものも限られるが、“X”からまず真っ先に連想されるのは“X 線”であろう。無線通信のフォネティックコード(音声での聞き間違いを防ぐため文字やアルファベットに割り当てた単語、たとえばA であれば「AlphaのA」などと言う)もX に当てられているのは“X-ray”である。そもそも未知数を表すX の記号が、1895 年にレントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)の見つけた新しい放射線にとりあえずつけられたという経緯は有名であるが、“透視像”が得られるというそのインパクトと医学、工学面での有用性により、レントゲンとX 線ということばは、謎めいたX 氏でありながら広く一般に認知されるようになった。しかしながらX 線には“透視”以外にもさまざまな分析上の用途があるということは、どの程度知られているだろうか。本稿ではX 線の性質を確認した上で、物質分析へのX 線の利用技術について概説する。
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