立命館大学 理工学部 木股 雅章
1.はじめに
いろいろな解説で、「最近注目を集めている」という形容はよく用いられる。確かに、記事になるのであるから、注目を集めていることに間違いはない。しかし、この表現は挨拶のような意味合いで使用されることも多く、これまでに筆者も赤外線センサの解説で何度もこの表現を使っているが、なかなか文字通りの注目を集めるには至っていなかったように思う。今、改めて「最近注目を集めている赤外線センサ」という形で始めたいと思っているが、今回はこれまでとかなり違っていて、「本当に注目を集めている」と表現していい状況にあると感じている。図1 に非冷却赤外線カメラマーケット調査の結果を示す1)。このグラフを見ると、今後の赤外線カメラ市場が注目に値することが理解できる。
ここで話題にする赤外線は、室温付近の温度を持った物体が放射していて、暗視と温度計測に利用できる8 〜14 μm の波長域の赤外線である。この波長域の赤外線を検出する非冷却赤外線イメージセンサでは、高感度化と多画素化が進んでいる。また、最近では低コスト化の新しい動きもみられ、これまで実現はまだまだ先の話だと思っていたスマートフォン向け赤外線カメラが今年から販売が開始されると報じられている2)。
本解説では、対象とする赤外線と、これを検出するための非冷却赤外線イメージセンサおよび赤外線カメラの技術的な特徴を説明するとともに赤外線イメージングの応用を紹介する。
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