京都大学 大学院 医学研究科 室田 浩司
前稿に引き続き、米国の産官学連携の歴史を振りかえるところから本稿を開始する。
4. 本格期(続)(1980 年代〜現在)
技術移転・ベンチャースピンオフ活動と並行して、この時期の特徴にあげられるのは、産業界と大学とのスポンサード・リサーチプログラム(Sponsored research program)が本格化してきたことである。
1995 年から2009 年の約15 年間で、米国大学がスポンサードリサーチにより獲得した研究費は、総額で1 兆7000 億円から4 兆8000 億円にまで増加した(スポンサードリサーチの定義については後述)。スポンサードリサーチの主なスポンサー(研究資金の提供者)は連邦政府であるものの、連邦政府の拠出金額と比例して産業界からのスポンサー資金も拡大し、2009 年には約3000 億円にまで達している。勿論、産業界からのスポンサーは、米国内の企業が多いものの、海外からのスポンサー企業の受け入れも活発に行われるようになっていき、海外企業との大型スポンサードリサーチ案件もいくつか見られるようになった。例えば、1981 年には、ハーバード大学の関連病院は、ドイツの製薬会社であった旧ヘキスト社との間で総額70 億円の研究資金の提供を含む12 年間の長期契約を締結した(その後、ヘキスト社は、2005 年にサノフィ・アベンティス社に吸収合併された)。また、2002 年に、スタンフォード大学は、複数の多国籍企業と総額200 億円を超える10 年間の長期契約を締結した(その中にはトヨタ自動車も含まれている)。さらに、2007 年には、国際石油資本の一社である英BP 社が、カリフォルニア大学UCバークレー校やイリノイ大学との間で、総額500 億円に及ぶ10 年間の長期のスポンサード・リサーチプログラムの契約を締結している。
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